ひよ子の本棚*

◆twitterやってます>>ID:ひよっこ@furari3710(https://mobile.twitter.com/furari3710)◆こちらでは140文字で書ききれなかったおすすめ本の記録を*※一部ネタバレご注意ください!※

午前0時の忘れもの(赤川次郎著)

生きるって切なくて苦しくて素晴らしい!そんな奇跡の物語*

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突然のバス事故で命を失った人々と彼らを愛する人たちの奇跡のお話。

完全にものがたりです。

不思議な、だけど、素敵なお話です。

 

こんな悲しい事故は起こらないほうがいいんだけど、

もし起こってしまったならば、この不思議な出来事が実際に起こってほしい、

そんなことを思ったりします。

 

 

生者と死者の交流の物語だから、嫌でも考えます。

「生きるってなんだ」とか「死ぬってどういうことだ」とか。

 

この物語は、嫌でも「死」がちらつき、つきまといます。

前提が死者だから、当然といえば当然なんだけれど…

 

でも本来は「死」ってこのくらい常に身近にあって、背中合わせなんだろうなあ、なんて思わされたりして…

 

 

今、大事な人と一緒に生きている毎日が尊いものに思えます。

いろんな年代の、いろんな関係性の、いろんな人がでてくるのだけれど、それぞれに素敵な物語があって、切なくて苦しくて尊いんです。

 

私たちの人生も、きっとそうやってできてるんだなって思います。

どんな関係性の相手とも、どんな状況の人でも、今一瞬一瞬を過ごしている毎日は、とても尊くて大切な時間なんだと思いました*

 

 

 

▼▼▼ 以降 ネタばれ 注意 ▼▼▼

 

 

 

印象的な物語のはじまり

印象的だったのは、死者からのメッセージに対する、受け取り手の反応。

みんな素直に受け取るんだよね。

ありえないって思ってるのに、でもどこかに奇跡を望んで、実際に行ってみる、行動してみる、やってみる。

 

もちろんあり得ないことが起こるから信じるのも当然なんだけど、

それだけそこに救いを求めていたんだなってことがひしひしと伝わってきて、

 

メッセージを信じられないけど信じたい、

信じたいけどちょっと怖い、

そんな葛藤を持ちながら集まる生者の人々に、

自分だったらどうするだろう、どう感じるだろう、なんて自分を重ねてみたりして、読み進めていました。

 

 

奇跡の時間は、たったの1時間

この1時間がとてもとてもあっという間で…ここ、本当にすごく考えさせられて。

1時間っていう限定的な時間が、なんというか、とても、うーん、リアルで、自分だったらどうするんだろうって、またも本当に考えました。

 

1時間ってすっごく短く感じる。

これまであった思い出を振り返るには短すぎるし、だけど一目会うとか一言話すよりは時間がある。

 

なにをしよう。なにを伝えよう。

これで本当に最期だから。

最期ってわかってる1時間って、生者にとっても死者にとっても、すごく悩ましい時間だと思います。

 

人生史上なによりも後悔したくない1時間になるに違いない。

だって奇跡だから。もう二度と起こらないから。

本来なかったはずの、最初で最後の特別な時間だから。

 

この1時間の重みが重すぎて、そこに向き合って大事に過ごす登場人物たちを見てなんともいえない気持ちになりました。

 

 

もうみんながみんな、やさしくて愛情深くて哀しい。

私は特に泣かされた人たちがいたんですが、きっと誰のどの人生と言葉が響くのかは、読者それぞれなんだろうなと思います。

 

 

毎日がこの1時間*

そんな感情移入しまくり、登場人物に重なりまくりの自分が思ったのが、この奇跡の1時間って毎日私たちがもっている1時間と同じなんだなってことでした。

 

「死」っていつも突然で背中合わせで

その中でいつさよならになるかわからない毎日で

だから昨日の1時間も、今日の1時間も、明日の1時間も、特別な1時間なんだよなあって、気づかされました。

 

 

無駄にスマートフォンいじっている時間があるのなら母にメールの1つでも送ろう、とか。

どうせ仕事する1時間なら周りの人と楽しくやっていこう、とか。

とてつもなくしんどく過ごす1時間が続くようなら環境ごと変えちゃおう、とか。

 

 

普段生きていると見逃しがちなこの感覚を

大切にもっていたいと思います。

 

でてくる人がみんな本当にやさしいなって思ったのは、

相手を思いやる気持ち、周りを気遣う気持ち、時間を大切にする気持ちで溢れていたから。

 

だから尊い時間がより尊く、

全員悔いのない時間を過ごして、最後お別れができたのだと思います。

 

素敵な物語でした**

 

 

 

午前0時の忘れもの (集英社文庫)

午前0時の忘れもの (集英社文庫)

 

 

 

キッチン・ブルー(遠藤彩見著)

「食」をトリガーにさまざまな人の生活に寄り添う物語*

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「食」がテーマになった1冊。

「食」がテーマになっている小説が大好きな私としては、すぐに購入!笑

 

 

この小説の面白いなあと思うところは、「食を憂鬱に描いているところ」。

複数の短編で1冊が構成されているのだけれど、ほとんどの物語が憂鬱に満ちている。

 

憂鬱な毎日の中でも「食(料理)」に助けられるというストーリー展開の物語ってよく見かける気がするのだけれど、

この小説は食そのものが憂鬱に感じている登場人物が多かったことが印象的。

 

食が憂鬱だと、こんなにも毎日がつまらなさそうに映るんだなって自分の感想もまた、1つの発見であり、印象に残ったことです。

 

 

「おいしいって思えなくなったら、私たぶん、疲れてる」

 

 

この帯コピーが逸脱。

このコピー1つで購入意欲が倍増したこと間違いないです☆

言葉の力を強く感じました*

 

 

 

▼▼▼ 以降 ネタばれ 注意 ▼▼▼

 

 

 

「生」に直結する食事

「食」は「生」に直結しているからこそ

物語や映画でも大切に描写されて、テーマになりやすいと思うのだけれど、

本当に直結しているな、と改めて感じさせられた数々の物語でした。

 

 

食事をするときって丸裸になっているようでどうも苦手だってとある登場人物が言うのだけれど、まさしくその通りだなと。

 

食事の好みや味付けだけでなく、

食べる順番も、カトラリーの使い方も、姿勢も、表情も、口の開け方も、咀嚼の仕方も、、、

普段はなにも意識していないのだけれど、

食事における一挙手一投足、食事の場面での選択の数々に、その人の生活や性格が滲み出ている。

(そう考えはじめるとめちゃくちゃ窮屈になるんだけれど…笑)

 

 

だから、丸裸にされているみたいって表現がしっくりきた。

生活感が一番でちゃうし、隠せないのが食事。

直結しているなって本当に感じるし、だからこそこの食事を誰と食べられるかって重要なことだなって思います。(人生の幸福感に直結するくらいに。)

 

 

満たされた食事って?

だからこそ、この食事が楽しいか楽しくないか、美味しく感じるか感じないか、憂鬱なのかそうでないのか、苦痛なのか至福なのか、

それがものすごく肉体的にも精神的にも直結している。

 

 

食事って本当に大事。

 

 

満たされた食事は、幸せな毎日につながっている。

 

満たされるってただ美味しいもの、高級なものってことじゃない。

 

私は1日1食限定で超高級食材をふんだんに使用した、三ツ星レストランのコース料理よりも、

スーパーの特売で買った野菜を使って、ちょっと焦げたりしてて、見た目も特別きれいじゃなくて、だけど心を込めて作ってもらったほかほかのごはんのほうがよっぽど美味しく感じるし、何より幸せだと思う。

 

それを作ってくれる人がいることも、食べられることも、それを作れることも、食べてくれる相手がいることも。

 

 

それは一人で食べる食事でも一緒で。

 

すごいしんどい思いして、踏ん張って、思いっきり仕事をやりきった後の牛丼でもいいし、

仕事頑張って徹夜して明け方に一人で食べる、寒い日の肉まんも嫌いじゃない。

仲間と酔ってはしゃいで二日酔いで気持ち悪い時のお味噌汁もいいかもしれない。

自分のために5時間こつこつと煮込んだビーフシチューも、とても贅沢だな、と思う。

 

 

美味しい食事は味や食材じゃなくて、

誰とどう食べるかによって完成されるものだと思う。

 

 

人生も食卓だ。起こることは食べ物。心を躍らせる美味も、顔を歪める苦みも、ともに囲むひとたちと分かち合うのだ。

 

 

この一説が本当によくわかる。

 

正直、いつでも幸せハッピー!!な毎日なわけがないし(そんな人いたら逆に怖い)、

悔しかったり悲しかったりマイナスの感情で囲む食卓もあると思う。

 

だけど悲しい時に食べたあったかいご飯に少しほっこりしたりとか、

涙の味がするお味噌汁とか、なんかいいと思うんだよなあ。

 

そういうときのお料理って忘れないし、心に残っている。

しかも大切な思い出として、残っている。

悔しい時に食べたお料理がいつの間にか大事な時に食べる勝負飯になってたりもする。

 

 

どんな時も、一緒に食卓を囲める人がいること。

どんな時も、食事を元気に食べられる自分がいること。

それ自体が幸せだと、私は感じます*

 

 

 

キッチン・ブルー (新潮文庫)

キッチン・ブルー (新潮文庫)

 

 

 

失恋天国(瀧羽麻子著)

失恋を乗り越えた先にある成長物語*

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失恋を乗り越えるための「失恋学校」を舞台にした物語。

 

結婚式目前に婚約者から振られた主人公雛子を中心に
登場人物が、失恋を乗り越えていく、
それぞれの成長物語です。

 

「失恋学校」という舞台設定が面白い!
全寮制をはじめとするいろいろな制度も、授業の内容も興味深い♪
こんな学校があったらちょっと入ってみたかったかも!
そんな風に思わせてくれます*

 

周りの登場人物も個性的で魅力的。
年代性別関係なしに、みんなそれぞれに、失恋はつらくて悲しい。
何回経験しても1回1回辛くないことはなくて、慣れることもなくて、、、
それだけ大きな出来事なんだなって思いました。

 

無理な切り替えや気持ちだけじゃない。
時間をかけて、周りの人との関わりを通じて、
自然と前を向いていく…そんな静かで小さな、
だけど確実な変化と成長が心地よいし、リアルだなって思いました。

 

 


▼▼▼ 以降 ネタばれ 注意 ▼▼▼

 

 

 

失恋は自分と向き合う契機

「結婚式目前に婚約者から振られた主人公雛子を中心とした失恋からの成長物語。」な、わけだけど…

結婚式目前に婚約破棄って…よくあるのか?


以前読了した「太陽のパスタ 豆のスープ(宮下奈緒著)」も
同じ境遇の主人公が自分を見つめなおす物語だったなあと、ふと思い出しました*
(こちらの小説もとても好きなのでまたいつかご紹介します♪♪)

 

 

失恋って大なり小なり、自分を見直すきっかけになりますよね。
(婚約破棄ともなると、「失恋」の一言で片づけていいのか
わからないほどにかなり大きな出来事に思えるけれど…)

 

あのときああしてればよかったのかな、とか
こんな私だからダメなんだ、とか
あんなヤツ最低!別れて清々した!、とか…

後悔、悲しみ、卑下、憤り、、、、、
いろんな感情が沸き上がってきて、いろんな自分が顔を出して、
そこと向き合う時間が増えてくる…

そりゃそうですよね、今まで2人で過ごしてきた時間がぽっかり空いて1人になるわけだから。

 

そんな中で雛子は失恋学校に通い、
同室のエミリと貴和子と過ごす日々の中で、
徐々に失恋を過去の出来事として清算していきます。

 

 

失恋は万人共通!

この同室の2人もまた面白い。
年齢、背景、性格、見事にバラバラの3人。
でもこの3人がなんとなく支えあったり励ましあったり…
一緒に少しずつ、それぞれのペースで前に進んでいく…

失恋って共通体験なんだなあと思う。


全然違うこの3人を繋いだのは失恋の共通体験。
どんな恋でも、どんな人でも、
終わったときの喪失感とか悲しみとか…
そこででてくる感情って、どこかわかるところがあるんだろうなあ。

 

 

失恋がくれるのは新しい自分?!

復縁って恋をやり直すことじゃなくて、
新しい恋をまたその人と始めることなんだって。
失恋学校の授業でならっていくのだけど…

なるほどなあ、と。


主人公がそこに身をもって気が付くとき、
雛子の成長を感じる。
ここで、雛子自身も、自分の変化を感じたんじゃないかと思う。

 

前の恋の続きなら、できるかもしれない。
たぶんできる。あれだけ長く、そばにいた。
八年間の思い出がある。日々の積み重ねがある。
でもそれだけじゃないか、と冷静な声が頭の中でささやいている。
たまたま長くそばにいた。
たまたま致命的な仲違いはなかった。
でも現に、事件が起こってしまえば、関係はたちまちこわれた。


「たまたま」の積み重ねが、8年という年月を積み上げたのか。
”それだけだ”って片づけちゃうのは、どこか寂しい気がするけど、
それはあくまで前の恋の続きで会って、
新しい恋愛じゃない。

ただ、一緒にいることができるだけで、
一緒にいたいわけじゃない。

 

同じ自分で、同じ相手と恋愛したところで、
結果は変わらない。
自分の変化・成長が伴ってこそ、また新しい恋が始まる。

それはきっと新しいステージに自分が進んだからなんだろうなあ、、、!
それが元彼であろうと、そうでなかろうと。ふむ。


恋愛下手な私にも共感できるくらいなんだから、
きっと失恋はみんなに平等になにかを残すんだなあ、
なんて思ったりした読後でした。

 

 

 

 

失恋天国 (徳間文庫)

失恋天国 (徳間文庫)

 

 

 

旅屋おかえり(原田マハ著)

人との絆が刺さる!旅に出たくなる1冊*

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すがすがしい物語でした*

気持ちのよい人たちしかでてこない、
素敵な素敵な物語。

面白くて、魅力にすぐにひきこまれて、、
一気に読んでしまいました。

 

一気に読んじゃうくらい面白かったんだけど、
なんかもったいなかったなって。
もっと読んでいたかったって。
もっとおかえりと旅をしていたかったなって、そう思いました。

 

 

 

▼▼▼ 以降 ネタばれ 注意 ▼▼▼

 

 

 

人を繋ぐおかえり

おかえりの強さってのが、なんとももう、かっこよかったなと。


人と人を繋げる人って、本当に素敵で、その人のなによりの魅力なんだろうなって思います。

 

おかえりってまさにそんな人。

 

相手と対峙することに対するちょっとした恐怖から
逃げずに、「ま、いっか」って思わずに、ちゃんと向き合える人。
つまり、相手にも自分にも誠実な人で、
そんなおかえりだから、いろんなところに故郷ができたんだなって思う。

 

 

社長との絆

社長との絆、素敵でした*

「つらいことも苦しいことも、全部旅をしながら自分の中でかたをつけてきたんだ。
どうだい、あいつの強いこと。
すがすがしくて、胸がすくほど格好いいこと。」

 

これを言える社長もまた格好よくて、
いい上司に恵まれてるおかえりを、

素直に羨ましく思ったり*

上司ってよりももはや父!の感じです。

 

2人の絆には泣かされました。

 


仕事と絆

おかえりの旅やスタートの時、元番組スタッフが集合したところ、泣きました。

あぁ~、なににも代えがたいほど、素敵な関係だなって
人との絆とか仲間とかそういうところに熱くなった。
こうして気持ちよく駆け付けられる人、チーム、
その中で仕事ができること。

本当によい!!!!!


こうやってみんながみんな仕事をできていたら日本ってもっと
活気があって明るいんじゃないかって思う。

私もこんな風に働きたい!
お金じゃなくて、人で働きたい!
そんな願望まで生まれちゃいました。

 


この1冊を通じてずっと感じていたのが
人の絆の美しさ、すばらしさ。

人を大切にしたくなる、そしてなにより旅に出たくなる、そんな1冊でした。

 

 

 

 

旅屋おかえり (集英社文庫)

旅屋おかえり (集英社文庫)