ひよ子の本棚*

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午前0時の忘れもの(赤川次郎著)

生きるって切なくて苦しくて素晴らしい!そんな奇跡の物語*

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突然のバス事故で命を失った人々と彼らを愛する人たちの奇跡のお話。

完全にものがたりです。

不思議な、だけど、素敵なお話です。

 

こんな悲しい事故は起こらないほうがいいんだけど、

もし起こってしまったならば、この不思議な出来事が実際に起こってほしい、

そんなことを思ったりします。

 

 

生者と死者の交流の物語だから、嫌でも考えます。

「生きるってなんだ」とか「死ぬってどういうことだ」とか。

 

この物語は、嫌でも「死」がちらつき、つきまといます。

前提が死者だから、当然といえば当然なんだけれど…

 

でも本来は「死」ってこのくらい常に身近にあって、背中合わせなんだろうなあ、なんて思わされたりして…

 

 

今、大事な人と一緒に生きている毎日が尊いものに思えます。

いろんな年代の、いろんな関係性の、いろんな人がでてくるのだけれど、それぞれに素敵な物語があって、切なくて苦しくて尊いんです。

 

私たちの人生も、きっとそうやってできてるんだなって思います。

どんな関係性の相手とも、どんな状況の人でも、今一瞬一瞬を過ごしている毎日は、とても尊くて大切な時間なんだと思いました*

 

 

 

▼▼▼ 以降 ネタばれ 注意 ▼▼▼

 

 

 

印象的な物語のはじまり

印象的だったのは、死者からのメッセージに対する、受け取り手の反応。

みんな素直に受け取るんだよね。

ありえないって思ってるのに、でもどこかに奇跡を望んで、実際に行ってみる、行動してみる、やってみる。

 

もちろんあり得ないことが起こるから信じるのも当然なんだけど、

それだけそこに救いを求めていたんだなってことがひしひしと伝わってきて、

 

メッセージを信じられないけど信じたい、

信じたいけどちょっと怖い、

そんな葛藤を持ちながら集まる生者の人々に、

自分だったらどうするだろう、どう感じるだろう、なんて自分を重ねてみたりして、読み進めていました。

 

 

奇跡の時間は、たったの1時間

この1時間がとてもとてもあっという間で…ここ、本当にすごく考えさせられて。

1時間っていう限定的な時間が、なんというか、とても、うーん、リアルで、自分だったらどうするんだろうって、またも本当に考えました。

 

1時間ってすっごく短く感じる。

これまであった思い出を振り返るには短すぎるし、だけど一目会うとか一言話すよりは時間がある。

 

なにをしよう。なにを伝えよう。

これで本当に最期だから。

最期ってわかってる1時間って、生者にとっても死者にとっても、すごく悩ましい時間だと思います。

 

人生史上なによりも後悔したくない1時間になるに違いない。

だって奇跡だから。もう二度と起こらないから。

本来なかったはずの、最初で最後の特別な時間だから。

 

この1時間の重みが重すぎて、そこに向き合って大事に過ごす登場人物たちを見てなんともいえない気持ちになりました。

 

 

もうみんながみんな、やさしくて愛情深くて哀しい。

私は特に泣かされた人たちがいたんですが、きっと誰のどの人生と言葉が響くのかは、読者それぞれなんだろうなと思います。

 

 

毎日がこの1時間*

そんな感情移入しまくり、登場人物に重なりまくりの自分が思ったのが、この奇跡の1時間って毎日私たちがもっている1時間と同じなんだなってことでした。

 

「死」っていつも突然で背中合わせで

その中でいつさよならになるかわからない毎日で

だから昨日の1時間も、今日の1時間も、明日の1時間も、特別な1時間なんだよなあって、気づかされました。

 

 

無駄にスマートフォンいじっている時間があるのなら母にメールの1つでも送ろう、とか。

どうせ仕事する1時間なら周りの人と楽しくやっていこう、とか。

とてつもなくしんどく過ごす1時間が続くようなら環境ごと変えちゃおう、とか。

 

 

普段生きていると見逃しがちなこの感覚を

大切にもっていたいと思います。

 

でてくる人がみんな本当にやさしいなって思ったのは、

相手を思いやる気持ち、周りを気遣う気持ち、時間を大切にする気持ちで溢れていたから。

 

だから尊い時間がより尊く、

全員悔いのない時間を過ごして、最後お別れができたのだと思います。

 

素敵な物語でした**

 

 

 

午前0時の忘れもの (集英社文庫)

午前0時の忘れもの (集英社文庫)